01.マシュマロよりも甘く






「ねぇ、貴女に見せたい場所があるんだ。一緒に・・・行ってくれる?」

そう言って詩紋くんが連れてきてくれたのは一面の花畑。

「うわぁ・・・」

「ここを見つけた時、絶対にちゃんと一緒に来たいって思ったんだ。」

「凄い・・・綺麗・・・」

「そう言って貰えると嬉しいな。」

にこっと微笑んだ詩紋くんにつられるよう、あたしも笑みを浮かべる。

「素敵な場所に連れて来てくれてありがとう。」

「ううん、ボクこそ・・・ありがとう。」

「え?」

「大好きな場所で、大好きな貴女とこうして過ごせるなんて・・・凄く嬉しい。」

「詩紋くん。」

不意に突風が後ろからふいてきて、乱れる髪を慌てて手で押さえた。

「うわ・・・凄い風。」

「本当・・・・・・あ、待って。髪に花びらがついてるよ。」

「え?」

「ちょっと待ってね。今取るから・・・」

そう言いながら詩紋くんの顔が近づいて、頭に手が伸ばされた。
ただそれだけの事なのに、何故かあたしの胸はドキドキと高鳴ってしまう。

「はい、取れたよ。・・・ちゃん?」

「あ、あぁ!あ、ありがとう!

自分がどんな顔しているのか分からず、火照った頬を誤魔化すよう両手で覆い詩紋くんに背を向ける。
そんなあたしの様子を見て、詩紋くんがクスクスと可愛らしい笑みをこぼした。

ちゃんって、可愛いね。」

「・・・詩紋くんには負けるよ。」

「ボクは男だもん。ちゃんの方が絶対に可愛いよ!」

そんな風に言ってくれる所がまた可愛いんだけど・・・なんて言ったら怒られちゃうかな。
ここはひとつ大人の余裕を持って、お礼を言っとこう。
そう考えて振り向いた瞬間、唇に何か柔らかな物が触れた。

「・・・」

突然の出来事に目を閉じるのも忘れて、目の前の物を凝視してしまう。



目の前にあるのは・・・そう、長いまつげを伏せている詩紋くんの顔。



「・・・」

やがてゆっくり目を開けた詩紋くんは、僅かに頬を染めながら今日一番の笑顔でこう言った。

ちゃんの唇って、マシュマロみたいに柔らかいね。」





年下を、なめてはいけないと思った ――― 最初の日





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